キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
『いただきます』

ミチルさんと向かい合って座り、手を合わせて夜ご飯をいただく。
テーブルの真ん中には、カセットコンロの上で程よく煮立ってる土鍋。透き通ったお出汁の中で、葉物野菜に囲まれて鶏団子とか海老とか、あたしの好きな餅巾着も泳いでる。

「熱いから気を付けなね、りっちゃん」

「はーい」

お玉で小鉢に具材をよそってるあたしに、火傷を心配するミチルさん。

いつも細めるように笑ってる、切れ長の眸。通った鼻筋と薄めの唇。細面に綺麗に各パーツが収まってて、繊細そうで品のある貌、・・・とでも云えばいいのか。
髪型も、前髪は少し左側から分けてセットしてあって、サイドや襟足も営業マンらしい清潔感のある長さに揃えられてる。
車の運転とかパソコンに向かってる時、眼鏡をかけることもあるんだけど、なんて言うか、デキる男感が半端ない。その上、物腰が柔らかくて穏やかだし、優しいし甘いし。

きっとミチルさん、会社じゃ死ぬほどモテてるんだろうなぁ、相変わらず。
以前ちょっとした成り行きで、そういう場面に遭遇したのをふと思い出す。
可哀想だけど、ミチルさんには唯一無二の相手がいるもんね。

そんなことをぼんやり考えてたら、お玉からつい鶏団子が鍋の中に落下して熱いのが手の甲に跳ねた。
 
「・・・ッ!」

咄嗟に引っ込めるような仕草をしたあたしに、ミチルさんが勢いよく立ち上がって手を掴んだ。

「りっちゃん、おいで」

流しに引っ張って来られて、蛇口の水で容赦なく冷やされる。
ほんのちょっとだし、赤くもなってないし、大したことないってばぁ~。
ココロの中で言ってみるけど、口には出さない。あたしを心配してる時のミチルさんに逆らうと、案外コワイことになるから。
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