キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
フロアを後にして、バレンタインチョコの特設売り場にも寄り、とにかく一箱に数が多く入ってるのを目当てに探す。3千円の予算内で、これだったらっていうのを選び、ついでに吉井さんと羽鳥さんへの感謝の気持ちで小さいのも二つ。
こないだも誘われて、三人でつくし野で飲んで。結局、羽鳥さんにおごってもらっちゃったし。・・・まああれは、あたしを口実に吉井さんと居たいだけなのが丸分かりすぎ。逆に可愛い。

目的の買い物を済ませ、腕時計を見やると1時を回ってた。
夕方になると冷え込むから、今日は午前中から出てきた。帰りの電車がラッシュになる前に早めに帰るつもりで。
でも折角だから、食べて帰ろうか。おススメの人気店でも検索しようかと、邪魔にならない場所でバッグの中にスマホを探る。と。そのタイミングでバイブが震え、雑多な賑わいで聴き取りづらい音と共に着信を告げた。

「はい、もしもし?」

『りっちゃん。今どこにいるの?』

応答した向こうから聴こえたのは、相変わらず優しい響き。ミチルさんの声だった。
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