キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
電車より遅くなった分アパートまで自転車を飛ばし、バタバタと夜ご飯の支度を始めたあたし。
何でも美味しくなる魔法の塩麹を使って鶏むね肉のソテーと、付け合わせの簡単マッシュポテト。ほんとはレンコンのきんぴらにしようと思ったんだけど、ミチルさんが帰って来ちゃいそうだから厚揚げの煮物にシフト。

お味噌汁用の大根をイチョウ切りにしてる最中、玄関で音がしてミチルさんが帰宅。ちょっと間に合わなかった!

「おかえりなさーい、ミチルさんっ」

急いで手を拭き迎えに出ると、紙袋を差し出したイケメンさんがにこりと微笑む。

「ただいま、りっちゃん。はいお土産」

「今年も大収穫?」

「どうだろうね」

他人事みたいなミチルさん。
中を覗くと、有名ブランドの包み紙が幾つも見える。

「いつも美味しいチョコありがとう。ミチルさん!」

「どういたしまして。りっちゃんが喜んでくれるなら、もらい甲斐もあるよ」

クスリと笑い合って。

「あ、ご飯っ。あとお味噌汁作ってるから、ちょっと待ってー」

慌てて踵を返した背中に「急がないよ」って柔らかな声。



ねぇ淳人さん。
この檻は優しいだけ。
毒になんて・・・ならないよ。
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