ビロードの背中
「・・・帰ったらすぐ友達と飲みに行くなんて、忙しいわね。」

彼はこちらを見ずに、フッと笑った。

「そうね。飲みに行くのは楽しみかな・・・。

姉さん・・・

姉さん、俺、東京公演が今日終わる事本当に知らなかった。」


「――メールの話?

・・・彼女とも、久しぶりに会うんでしょ。」


あくまで私だけが思っていただけかもしれないけど、

今夜は彼と特別な夜になるはずだったのに。

運命はとことん私に容赦しない・・。


「どう答えたらいいのか、正直わからないや。

せっかくの旅行が、こんなふうになっちゃうなんて・・・。」


「本当に。

・・・責任取ってもらおうかな。」


「責任か・・・。

はい。二人の良い思い出になるよう、なんでもします。」


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