12月の春、白い桜が降る。
12月の春、白い桜が降る。
その数日後、彼女はこの世から消えた。

あの夜、僕は公園で自殺するつもりだった。
本気で一緒に彼女の元へ行くつもりだった。

でもそこで、彼女が、ひなたが、現れた。


冷たい風でなびいた黒髪と、ラムネの瓶に入れられたビー玉のような澄んだ瞳。

相変わらずだ。相変わらず、彼女は綺麗だった。

そんな彼女を最後に見れて、運がいいと心底思った。

綺麗だった彼女を見つめたまま静かに目を瞑って、飛び降りた。

飛び降りていただろう、あのままだったらきっと。
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