12月の春、白い桜が降る。
隣で本を読んでいる彼女が、ゆっくりとその本を閉じる。

彼女は泣いていた。


「どうした?」
「すごい感動した、この話」

僕は彼女の頭を二回ポンポンとする。

「さすが、冬郷くんね。」
「あぁ、あいつがまさか、作家になるとは思ってなかったけど。」

カレンダーを見れば日付は十二月二十六日。

「見てみろよ、千夏子。」

窓の外に目をやると、雪が空からゆっくりと舞い降りてきている。
時間が止まってるのではないかとさえ思う。

「わぁ…!綺麗」
「そうだな」

その雪はまるで、桜の花びらが舞っているようで、彼女が手に持っている本のタイトルがとても当てはまっていた。
< 209 / 210 >

この作品をシェア

pagetop