12月の春、白い桜が降る。
祭りが開かれているお寺の通りでは、毎年同じように人がとても多かった。

僕は普段から人と沢山絡む訳でもないが人混みが苦手な訳では無い。

そんなことよりひなたとはぐれてしまわないかの方がよっぽど心配だった。

あのデートの日以来、僕らは手を繋ぐことに躊躇いを無くし、今日もそうした。

ひなたはりんご飴の屋台の前で目を犬のように丸く輝かせた。

「買お」と僕が誘導すると、彼女も弾んだ声でうん、と返事をした。

彼女は大きいサイズの方をひとつ買って、満面の笑みで屋台の中年のおじさんに「ありがとう!」と言った。

今日はいつにも増して綺麗で透明感のある彼女のその笑顔に、思わずまた見惚れた。

初めてあった日とは別人のように彼女は明るい性格をしていた。

小さなことでもきちんとお礼を言い、謝罪をし、

僕からしたら大袈裟だと思うぐらい喜んだり悲しんだりして、感情性豊かな人だった。
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