やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
「んんっー」
大きな体があくびと共に、課長が私を抱いたまま伸びあがる。
あくびしてる間に、床に散乱した衣類に目が行った。
それらを拾おうとしてかがみ込んだら、いきなり伸びて来た腕にからめとられた。
私は、課長の腕に逆戻りした。
ちょっと待って。
課長は、私を正面に向かせた。
今度は、俺のものだと言わんばかりに、両手で私の胸をつかんだ。
「何してるんですか?」強引な態度に思わず抵抗した。
「寒いなら、もう一度温まるか?」
「寒いなら、エアコン入れますから」
行方不明のリモコンを、私が見つけ出す前に
課長は、私が唯一身につけているキャミソールの中に指を滑り込ませた。
課長は、私のうなじにキスをするのに夢中で、私の声など聞こえてない。
薄っぺらなキャミソールなんて、ないも同然だけど。

くどいようだけど。自分に言い聞かせる。
この人は、私の上司。
町田侑介。それ以外の誰でもない。
昨日まで、上司以外何者でもなかった男。
その、昨日まで何でもなかった男が、恋人みたいに振る舞ってる。

昨日まで、全く意識してない人に抱かれてる。私、どうかしているのだろうか。
課長は、私の体に思うがままに触れている。
私の顔を強引に顔を正面に向かせた。

町田課長は、私の上司。
両手で胸をもてあそんでるけど。

だめ。やっぱりこの状況について行けない。
彼に対しては、上司として振る舞う以外、どんな顔をしていいのか分からない。
せめて、こんな格好で目覚めたりしなければ。
ベッドの上に二人で座っていても、表情一つ変えずに、「課長、ここに印鑑下さい」って言えるのに。


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