やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
休日課長の家に出かける準備をした。
いつもより念入りに身だしなみに気を使い、少しでもよく見られようと気を配った。
慣れないお化粧をいつもより念入りにして、洋服も新しく買った。
お店のマネキンにかけられていた、ワンピース。少し派手だと思ったのだけど、お似合いですよと言われて買ってしまった。

彼の家に近づくにつれて緊張してきた。落ち着こうと、途中でコーヒーショップで時間を取ったから、昼過ぎになってしまった。
課長、出かけてしまってるかもしれない。
やっぱり、前もって言っておくべきだったかな。でも、お邪魔していいですかなんて聞いて、断られたらどうしよう。私だって立ち直れない。
そんなことを考えてたらここから動けなくなってしまった。
でも、ここで引き返すわけにはいかない。
彼の好みそうな花柄のワンピースも買ってしまったし。

課長の家が見えて来た。
最初に様子をうかがうようにして、塀の切れ目から中の様子をのぞく。
まるっきり、中をのぞく怪しい人物だから、周囲の様子には気を遣う。
課長は、家の中にいるようだった。

シャツにセーターのラフな格好でソファに座ってる。
一緒に家にいた時も、あんなふうにくつろいでいた。
彼は、一人でいるのだろうか?

よく見ようと、前に乗り出した時キッチンから女の人が出て来た。

エプロンをして、大き目のお皿を手に持っている。
町田課長は、彼女から皿を受け取ると、味見をするように一つつまんで口に入れた。
彼女に向かって、何かつぶやいてる。

彼女の方も、課長に向かって微笑んでいた。


しばらく、その様子を見ていたけれど。

どう見てもお似合いだった。

多分、課長が作る料理のようにちゃんとしたものを作るんだろうな。
「なんだ、もう、別の人いるんだ」
彼に聞くまでも聞くまでもないってことか。


ベルを鳴らすことなく、私は家に引き返した。
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