やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
「その頃、課長って忙しいでしょうから」
私は、なるべくなら課長と顔をあわせたくない、一心で言う。
「課長は、いつでも忙しいよ。それとも顔も見たくないって言うなら、呼ばないけど」
早紀先輩も、私の事情を察していっててくれる。
「早紀さん、本人に聞こえてるよ」田代君が笑って言った。
「大丈夫。課長、仕事に集中してるから、他のことに気を取られたりしないわ」
「すいぶん、素っ気ないのね」
「ええ」私の課長に対する態度に、早紀先輩が不思議そうに言った。
飲み会当日になった。
私と早紀先輩が話してるところに、田代君がやって来た。
田代君が、申し訳ないというジェスチャーをして見せた。
「ごめん、スケジュールの都合がつかないって」課長が出張で来られないと田代君が言った。
「マッチーほんとに来ないの?」早紀先輩が呆れたように言う。
「その代わり課長、ホワイトデーだからって、軍資金たんまり置いていかれました」
田代君が指で数字を示す。早紀先輩が口笛を吹く。
「案外、小さい男ね」早紀先輩は、面白そうに言う。
私は、「課長をあおるのはやめてください」と、小声で言う。
「じゃあ、このお金で営業も呼んでぱあっと飲もうか?」
早紀先輩がフロア中に聞こえる声で言う。
「早紀先輩、飲み会なんて大丈夫ですか?」
「もちろん、行くわよ。旦那に都合つけたから。飲むわよ」早紀先輩が親指を立てて答えてくれる。
「僕は、最後まで付き合いませんよ」田代君がはっきり断った。
何で希望なんて出したんだろう。
楽しい仲間に囲まれて、このままでもいいのではないかと、今でも思ってしまう。
でも、それは違う。私は、開発課の人間だ。
ずっとシステム開発に関わって来たのだ。これからも、そうしていくしかない。私は、あらためて二人にお礼を言う。