やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
春の風が暖かく感じる。
4月になって、季節はもう後戻りしないのだと感じる。
2回ほど挨拶がてら、次の職場に顔を出して見た。以前も働いていた職場だから、慣れているけれど、一時間半の通勤は辛い。

ずっと一人の日が続き、ようやく現実を受け入れる気になって来た。
ここに住んでいれば、いつか課長が来てくれるかも知れないという期待だけで、住み続けられない。
「ゴールデンウィーク、本気で引っ越しを考えるか」いつまでも、彼を待ち続けるわけにはいかない。さっぱりとした気持ちで家を出た。

都心から通勤するのだけれど、結構人が電車に乗っている。
逆向きに通勤する人も多いのだ。
改札を出て、会社のはいった大きなビルを見上げる。今日からここで過ごすのだ。
彼のいない生活を送るなんて、私にできるだろうか。不安で仕方がない。

フロアについて、メールに書かれたフロアまでエレベータで上がる。
ここで働いてた時は、疲れ切っていて他の物を見る気力もなかった。
ロビーの花がきれいに飾られていることも、エレベータに乗っている人たちの顔も、きっとどこかですれ違っているはずなのに。
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