やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
受付で名前を告げ、オフィスに通してもらうまで待たされた。
「部長がお部屋でお待ちになるそうですので、そのままお入りくださいと言われる。
「ありがとうございます」頭を下げて言われた通りに進んでいく。
「部長?直接出迎えるんですか?」エレベータでフロアの受付の女性に聞いた。
「申し訳ありません。私は、何もうかがっておりませんので」にっこり笑って返された。

部長が自ら出迎えるって何だろう。発足して間もないから人がいないというのは、本当らしい。
開発企画室と書かれたプレートを見つけた。真新しいパネルに仕切られた、部屋が作られていた。ノックをして中に入る。
大きく息を吸う。

「失礼します。開発企画課に配属されました、神谷都です。よろしくお願いします」
最初が肝心だ。丁寧にお辞儀する。

「ああ、よく来てくれたね。ここに座って」
背の高いすらっとした男性が立っていた。遠くて顔ははっきり見えないけど。
横顔がちらっと見えたけど、部長にしてはかなり若い。
「失礼します」
窓から景色を眺めたまま、こちらに背を向けたままでいる。
言われたようにソファに腰を掛けた。
「あの……」
背を向けたままだんまりの部長にもう一度声をかけた。



「よく来たね、都」

部長は、振り返らずに言う。
「都?」
< 130 / 159 >

この作品をシェア

pagetop