やさしくしないで ～なぜか、私。有能な上司に狙われてます～

近づいてしっかりと相手の顔を見た。

背の高い、均整の取れた体つきの男性。
何度も会いたいと思った男性がそこにいる。

町田課長が、どうして？
彼がここにいる意味がわからず、ぽかんと彼の顔を眺める。

情報システム部　開発企画部長　町田侑介
デスクの上には、ネームプレートが置かれている。

目の前の男が笑いかけてくる。
両手を広げておいでとジェスチャーする。

町田課長が、部長？
どういうこと？

最初は、会いたかった人が目の前に現れて、嬉しくなって飛びつきたかった。
でも、そうするわけにはいかない。
しっぽを振って彼の元に飛び込んでは、いけない。

それどころか、会えて嬉しいという感情から、まったく逆の感情か芽生えてくる。

すぐにふつふつと別の感情が湧いてきて、嬉しさも吹き飛んだ。
彼は、喜んで飛び込んでくるものかと期待していてこっちに来いと構えている。

私が、無表情なので彼は不安になったのか、近寄って来た。
私は、彼の顔を目の前にして言う。

「お早うございます。部長。私は何をすればよろしいでしょうか？」声に出して見ると、腹立たしさがこみ上げて来た。
「都、落ち着いてくれ。話そう。とにかく、一度、話そうじゃないか」
私は、きっぱりとした態度で言った。
「業務外のことは、そのうち伺います。今日のスケジュールを教えてください」