やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
とにかく、一息つかなきゃ。

私は管理部に行き、庶務課の女性に挨拶をする。
知らない女性だった。彼女から、事務的な説明を受ける。
新しい部署はまだ、発足したばかりで、人選もこれからという段階らしい。
町田課長……じゃなくて。
町田部長と二人体制でというのも、当面は、冗談じゃないみたいだ。
町田部長は、新しい部署を作り出して私を呼び寄せたのだ。

呼び寄せた?どういうこと?
呼び寄せるつもりなら、話が来ている段階で相談してくれたら、いいのに。

どうして、今になって現れるの?
何かおかしい。
どうして言ってくれなかったの?
私に黙ってたのは、どうして?

私は、総務課からファイルを一式受けとると、自分のデスクに戻った。
部長は、まだ部屋の中にいて、同じように窓の外を見つめていた。

「今のところは、特にやることはない。その書類片付けていていいよ」
「はい。ありがとうございます」できるだけ素っ気なく言った。
「部長、私が望んだのは、ここではありません。開発課何です。ここには、いつまでいなければいけませんか?」
町田部長は、こっちを見た。
私は、感情を抑えながら言う。顔をあげた瞬間に、欲しかったものが手に入る。
でも我慢しなきゃ。ここで、彼の思うようにはならない。

彼は、一呼吸してから話し出した。
「都、考えてみろ。俺が君を開発課のむさい男の群れの中に放り込む分けないだろう?」
「体は十分回復してます。それに仕事ですよ。特別扱いしないでください」
「体だって充分じゃない。まだ、疲れが取れてないはずだ?」
「すでに、医師には許可をもらってます」
「医師に現場のことは、わからないさ」
「部長……」
「第一俺が、都にそんなこと許す分けないだろう?」



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