やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
こうなっては、仕方がない。
彼に、私が見たことを話すことにした。

「ずっと前に、あなたの家に行ったの」
「家に?」彼は、眉をひそめた。
話が思わぬところに行ったときに、よくそうして聞き返してくる。
「その……いきなり訪ねて行こうと思って」
「それで?」

「えっと……女の人がいたの。家の中に。
あなたは、その人が作ってた料理を味見してた」
「ん?」さすがに部長も驚いた。
「この目で見たんだもの。確かだわ」
ちょっと待って、というように指を私の唇に当てた。
「多分、それは義理の姉だ。独り暮らしの義理の弟を心配して、お節介にも時々様子を見に来るんだ」

彼は、顔を近づけて来た。
「ということは、一人で家に来てくれたんだね。それが、何故か義理の姉と甥っ子を見かけて、声もかけないで帰ったんだ」
「休日のところ、邪魔しちゃ悪いと思ったのよ」ばつが悪くなって、そう言った。
「姉に見つかったら、君のこと質問攻めにして、大変だっただろうけどね。彼女は、君の存在に気がついて、家に連れて来いってうるさいんだ」
「そう……」
「ん?まだ、何かあるのか?」
「それだけじゃない……
どうして、私のこと遠ざけたの?」
彼は私の肩をつかむと、そっと抱きしめた。

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