やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
「これは、言わなきゃいけないか?」
「当然です。気まぐれに態度を変えられたら、私の身が持ちません」
「そうか。それは申し訳なかった」部長は謝ってくれた。
「それで?なんて説明するんですか?」
彼は、大きく息を吐きだしてから私の手を取った。

「君と岡が一緒にいるところを見せられて、ショックを受けたと言ったよね?」
「ええ」
「どうしてショックを受けたかって言うと。本当は……
これが本来、君が望んだ姿じゃないかって思えて……俺の言ってること、分かるか?」
彼の表情は怒っているというより悲しんでいるように見えた。

「あの時のことは、説明した通りです。どうして、私が言ってること、素直に受け取ってくれないんですか?」
彼は私の手をぎゅっと手を握って言った。
「多分、惚れてるからだろうな。どうもダメなんだ。君のこととなると、どういう訳か冷静じゃなくなる。君だって岡のことを仕方なく介抱したんだって、頭ではわかってる。
でも、感情がついていかないんだ。俺より、あいつのこと大切にするのはどうしてなのか。どうしても考えてしまう」
「それならどうして、わざと冷たい態度を取るんです?私には話し合う機会も与えられないんですか?」
「話し合う?そんなつもりはなかった」
「どういうこと?説明もさせてもらえないの?」

「君は、岡のことが好きだった。そして、家まで送ったのが岡田と勘違いしてた。
君は、岡に抱かれてると勘違いしてたんだ。
次の日の朝の君の驚いた顔は、今でも忘れられない。さぞがっかりしただろうね。朝起きたら、思いの男じゃなくて苦手な上司だったんだから。
上司と関係したことで、君は岡のことを諦めたんじゃないか?
俺は、その、君の気持ちを踏みにじってしまったかもしれない……」
辛そうに下を向いてしまった。

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