やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
「お礼することの、いったいどこが変なんですか。私は、ただ、タクシーで送ってくれたのが課長だったって聞いて、お礼を言いに来ただけです」
課長は一瞬、真顔になって私の顔を見つめた。
「タクシー?
ああ……なんだ、そっちか」
そうか。そっちかと言って、またゲラゲラ笑い出した。
「そっち?」私は、課長の態度に不安を覚えた。いくらなんでも笑い過ぎだ。
「なんだ……
急に何を言い出すのかと思ったら。
そうか。
なんだ、そっちか。
俺、てっきり。
あっちのお礼かと思ったじゃないか」
「はあ?」
あっちって……
あっち。
「あのことって、何ですか?」
まさか……
なんてこと。
課長の態度を見て、
自分がからかわれてるんだと思った。
「言わなくてもわかるだろう?
それとも、逆か?
どういたしまして、よろしければ、またの機会にとでもいえばいいのか?
それとも、みんなの前ではっきりさせて欲しいのか、都?」
今度は自分の顔が、かっと熱くなるのが分かった。
「なんてこと言うんですか!」
「ああ、悪い。からかうつもりはなかったよ。でも、あんまり無防備で可愛いこと言うから……つい」
「課長なんて、大っ嫌いです!」
「都、また顔赤くなってるぞ。少し冷やしていけ」
「大きなお世話です。そ、それから、タクシー代いくらでしたか?」
「さあ。割り勘にしてる場合じゃなかったからな。お礼なら、なんでも受け付けるぞ」
「わかりました。失礼します!」
「なんでもいいが、早く機嫌を直してくれ。な?」
課長は、思わせ振りな視線を向けると、
「さあ、仕事に戻れと周りに命令した」