旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



……情けない。

元カレと再会しただけで、過去のことを思い出して動揺してしまうなんて。



未練?ううん、そんなものじゃない。

ただ、思い出してしまうんだ。

彼が私に向けた冷めた眼差しと、遠くなる心の距離。



その度苦しくなって、自分のことが嫌いになっていくのに。





それから私は夕方まで取引先と打ち合わせをおこない、会社に戻り、津ヶ谷さんと顔を合わせることなく帰宅した。



「はぁ……」



部屋着に着替え、晩御飯の並ぶ食卓へつくと、昼間のことを思い出して無意識にため息が出た。

それを聞いて、夕食のおかずをテーブルに並べる小西さんは不思議そうに首をかしげる。



「あらあら、なにか悩み事ですか?」

「まぁ、いろいろありまして」



こんな話、小西さんに言って津ヶ谷さんのお母さんにまで届いてしまったら大変だ。そんな気持ちもあって言わずに濁す。

こちらの考えを知ってか知らずか、小西さんはそれ以上深く聞くことなく、思い出したように台所へと向かった。



「ため息つくと幸せが逃げてしまいますよ。そんなときはコレです!」



そして小西さんが差し出したのは、リボンがつけられたワインボトルだった。



「ワイン、ですか?」

「はい。友人からいただいたのですが私も主人も飲めませんので。よろしかったら愁さんとおふたりで飲まれてくださいな」



私も普段あんまりお酒って飲まないんだけど……。

そう思いながらまじまじと、深い赤紫色が綺麗な赤ワインを見た。


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