旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



笑いながら彼が言ったその言葉に、悲しいとか切ないとか、それ以上に自分が恥ずかしいと思った。



人と話すことが苦手で、勇気を出すこともしてこなかった。

そのせいか、少し話すだけで息があがり、言葉がつまり、顔も真っ赤になってしまう。

そんな顔が見えないように、猫背になって下を向いて、髪も顔を覆うようにのばしたまま。

好きな世界しか、見てこなかった。



そんな私に彼の言葉は当然だったのかもしれない。



だけど、この先もずっと同じ言葉を繰り返されるのも、同じ気持ちになるのも嫌だったから。

変わらなくちゃって、思ったんだ。



「メイクを覚えて髪も染めて、ダイエットもして、ファッションも表情も勉強しました。地元を離れて都内の大学に通うのを機に、大学デビューしたんです。もちろん、自分の趣味を理解されないこともわかってましたから隠すことにして」

「で?その大学デビューの成果は?」

「それはもう、これまでとは真逆でした。からかわれることもなく、男女ともに友達も増えて、私変われたんだって嬉しかった」



背筋を伸ばして、明るい色の髪をかきあげて、高いヒールで歩く。

それだけで、周囲の反応はまるで違かった。



人に囲まれ、話しかけられ、そのうち自分からも話せるようになった。

私は変われたんだって、嬉しかった。

けど、心の中には常に闇が覆う。



「……でも、本当の自分は誰にも見せられないままだったから、どうせ上っ面しか見てないくせにと思って心は開けなかった」



ぼそ、とつぶやいた言葉に、それまで相槌を打って聞いていた津ヶ谷さんの声が途絶えた。

同様に仮面をかぶるその胸の中にも、似たような気持ちがあるのかもしれない。


< 104 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop