旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「いやぁ、でも津ヶ谷さんに桐島さんだなんて今年は豪華な面子ですねぇ。インテリア事業部からは乾さんも出るし……」
「乾さん?」
「えぇ。あ、ちょうどあそこにいる茶髪のセミロングの女性です」
主任が視線で指す先にいるのは、隣のインテリア事業部の部屋からちょうど出てきたところの数名。
その中にひとり、茶色い髪を巻いた華奢な女性が見えた。
目鼻立ちのはっきりとした、綺麗な人だ。
白いブラウスにロングカーディガンというシンプルな格好だけれど、それだけで華やかさがあってとても目立つ。
あんな人、隣の部署にいたんだ。普段全く接点がないから気がつかなかった。
「確かにお綺麗ですね……」
「でしょう?彼女、ちょっと前に直営店から転勤してきたんですよ。あ、でも津ヶ谷さん的にはやっぱり気まずいかなー。大丈夫かな」
「え?」
津ヶ谷さん的には?
その言葉の意味がわからずたずねると、主任は声をひそめて、こそこそと言う。
「いや、実は一部の噂なんですけど。津ヶ谷さんと乾さんって、前に付き合ってたらしいんですよ」
え!?
ということは……元カノ!?
あんな美人が!?
「津ヶ谷さんってよく直営店にも顔出すから、それが縁で付き合うことになったらしくて。周りにバレたら大騒ぎになるからって、隠してたみたいですけど、まぁ一部にはそういう話って回っちゃいますよね」
苦笑いで教えてくれた主任に、私は驚く感情をぐっとこらえてにこりと笑う。