旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「え……?どうして、それを?」
「小西から渡された。『捨ててほしいって託されたけど捨てられるわけがない』って」
その手は靴が脱げたままの私の右足に優しく履かせると、続いて左足も履き替えさせた。
小西さんから受け取った靴を私に届けるため、持ってきてくれたんだ。
まだ綺麗なパンプスに履き替えた両足に、胸には嬉しさが込み上げた。
ところが津ヶ谷さんは腕を伸ばし私の顔を両手で掴むと、キッとこちらをにらむ。
「お前、いい加減にしろよ!人の話聞かないわ、本当に出て行くわ……ありえないだろ!」
「す、すみません!」
怒られた!
肩をすくめて謝る私に、津ヶ谷さんはため息をひとつついて、親指でそっと頬を撫でた。
「……大切な話くらい、逃げないで聞いてくれ」
真剣な眼差しでささやく。
あの日も津ヶ谷さんは話を聞いてほしいようだった。
……だけど、私は臆病だから聞けないよ。
「聞きたくないです。だって、私、前提も忘れて『本物になりたい』なんて思っちゃうんです」
都合がいいから選ばれただけ。そうわかっていても、それ以上の理由を求めてしまう。
津ヶ谷さんがくれる言葉や温もりが、心からのものだったらいいのになんて、期待をしてしまう。
「解放してやる、なんて津ヶ谷さんにとってはなんてことない言葉でも、私にとってはつらいことなんです……それくらい、津ヶ谷さんのことが好きなんです」
強く優しく、真っ直ぐなあなたのことが好き。
今こうして、言葉とともに涙が溢れてしまうほどに。
ぽろぽろとこぼれた涙で頬を濡らす私に、津ヶ谷さんは頬に手を添えたままこちらを見つめる。