旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
門から玄関までの石畳を歩きながら見れば、敷地内には綺麗に手入れされた大きな松の木が並ぶ。
それを見ながら歩いていると、不意に足を止めた彼の背中に顔をぶつけた。
「いった……なんですか、いきなり」
「お前に選択肢をやろう」
「へ?」
ぶつけた鼻をさすりながら首をかしげると、津ヶ谷さんは私の前に指を二本差し出す。
「本性をバラされるか、俺と結婚するかの二択だ」
「は……?」
「それ以外の選択肢はない。今ここでどちらかを選べ」
そしてそれ以上の問いはさせないというように、玄関の引き戸を開けた。
目の前に広がる玄関に、家の奥からバタバタという音とともにひとりの女性が姿を現した。
50代くらいだろうか、ショートカットのふんわりとした髪を揺らしたややふくよかな中年女性。
エプロンを身につけた彼女は、笑って津ヶ谷さんを出迎えた。
「おかえりなさいませ、愁さん」
「ただいま、小西さん」
先ほどまでの偉そうな顔はどこへやら、にこりと微笑み応える津ヶ谷さんに一瞬ギョッとしてしまう。
お手伝いさんの前では王子なんだ!
小西さんと呼ばれた彼女は私の姿を見つけると、珍しいものを見るように目を丸くする。
「あら、そちらは?会社の方ですか?でも愁さんが誰かをお連れするなんて珍しい、しかも女の子……もしかして」
小西さんのその発言から、私は瞬時に理解した。
先ほど津ヶ谷さんが、『今ここでどちらかを選べ』と言っていた意味を。