旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



「私は、王子よりも素の津ヶ谷さんのほうが人間味があっていいと思います」



意地悪いことばかり言って、呆れたように笑って、偉そうで。だけど、深い優しさを持っている。

時々子供のように笑う、ありのままのあなたのほうが、人らしくて魅力的だ。



「それになんだかんだ言って優しいですし。意外と子供っぽいところもかわいいですし」



今日だって、成り行きとはいえこうしてデートに連れ出してくれた。

私に合う色を即決できるくらい私を知っていてくれた。

隣を歩いて、手を繋いで、観覧車に乗ってくれた。

私は、そんなあなたがいい。



自然とこぼれた笑みでそう言った私に、津ヶ谷さんは少し驚いた顔を見せてから、顔を背けた。



「別に、優しくない」

「優しいですって。津ヶ谷さんが認めなくても、私は知ってますから」

「……変なやつ」



褒められることが気恥ずかしいのか、津ヶ谷さんは顔を背けたまま照れ臭そうに頭をかく。

そんな珍しい彼の一面に、思わず笑ってしまった。



「こら、笑うな」

「ふふ、すみません。だって珍しくて」



津ヶ谷さんは拗ねたように言うと、私の頬を両手で引っ張る。

けれど、頬に触れるその手の熱さに、余計「ふふ」と笑みがこぼれた。



この体温も、染まった頬の赤さも、私だけが知っている。

他の誰も知らない、ふたりだけのもの。


それがなんだか、愛しく思える。






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