旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



そのまま津ヶ谷さんに手を引かれるようにしてやってきたのは、お台場にある大きな観覧車だった。

赤色のゴンドラに乗ると、先ほどまで自分たちがいた地上から離れ、東京湾やレインボーブリッジが一望できた。



「わぁ、いい景色!」



窓から見上げると青空が近く、思わず興奮したように言う。



「でもどうして観覧車なんですか?」

「どうしてって、彩和が乗りたいって言ってたんだろ」

「え?」



その言葉に思い出すのは、ここについた時に津ヶ谷さんに話した妄想の話。



思えば、さりげなく手を繋いで、観覧車に乗って……できる限り願望を実現してくれているのだろう。

バカにしながらもそうやって、覚えてくれていて、叶えてくれる。

そういう優しさがまたズルいよ。



一見冷たくて、偉そうで、ムカつくところも多いけど、でも優しいところがこんなにある。

なのに、どうしてそれら全てを隠してしまうんだろう。



「……あの、津ヶ谷さんはどうして王子のフリなんて?」

「その方がラクだからな。仕事上も普段の付き合いも。……本音なんて言えるかよ。女から見たって、普通の俺より『津ヶ谷王子』の俺の方がいいんだろ」



確かに、そう。

みんなに優しくて、物腰が柔らかい、いつもニコニコした王子のほうが素敵で、理想的。



私もそう思っていたし、だからこそ最初は普段の津ヶ谷さんが衝撃的だったのもある。

……だけど。


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