強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
「でも、俺は中身も女の子らしい子が好きだから、ゲーム好きとかお酒好きとかは合わなかったんだ。ごめんね。」
「いえ。もう、大丈夫です。……あの用件は……?」
緊張で震えそうになる声を我慢しながら言葉を発すると、先輩は更に近づいて、耳に唇が当たるぐらに接近してきた。そして、色気を含んだら声で、囁いた。
「君が寂しいなら、体の相性は良かったし、そういう関係になってあげようか?」
驚きのあまり、目を大きく開いたまま動けなくなる。返事をせずに迷っていると思ったのか、そのまま先輩に優しく抱き締められて、「会える日は優しくしてあげるから。もちろん、彼女みたいに。」と言われてしまう。
千春は、「やめてください。」と言いながら、先輩の体を軽く押して、少しずつ後退りをして離れている。
手を伸ばしても触れられない距離になってか、千春は、彼を恐る恐る見つめながら、小さな声で先輩に返事をした。
「あの、彼氏が出来たので、そう言うことは出来ません。」
そう言うと、先輩は驚いた顔を見せた後、少し顔を歪ませた笑みを浮かべた。
「あぁ……千春ちゃんは顔とか見た目は良いからすぐに彼氏できるよね。でも、付き合うと頑張って女らしく演じているのがすぐにバレるんだよ。」
「先輩…………。」
「それで、すぐに別れるんだから、猫被るのやめたら?だまされる男が可哀想だよ。」
先輩の言葉が頭の中を巡り、意味を理解する頃には、千春は顔はカッと赤くなり、目には涙が溜まっていた。
先輩の顔がぼやけて見える。笑っているのか、怒っているのか、呆れているのか。表情はわからなかったが、今はそれが調度よかった。
先輩の顔を見るのが怖かったのだ。
「………ごめんなさい。」
千春は、吐き出すように小さな声で先輩に言った後、小さく頭を下げて部屋を小走りで飛び出した。
早く彼の前から逃げたかった。
憧れて、大好きだった駿先輩。
彼は自分の外側しか見ていなかった。そして、彼女ではない、体の関係を求めていたのだ。
そして、それに気づかずに、また彼女として求められるのではないかと勘違いをした自分がとてもみじめで、そして、愚かだと気づいた。