強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
「おい、大丈夫か?」
「あ、秋文……おはよう。」
「昨日はその、悪かった。夢中になりぎた。」
「ううん。私がそうして欲しかったからいいの。……もう出掛けるの?」
「今日からまた遠征だ。」
今日から地方での試合が続く。休日で千春は休みの日だがしばらくは会えない。
秋文が起きる時はまだ熟睡していた千春。出掛ける前に千春の顔を見ていこうと寝室へ向かうと、すでに千春は起きており、ベットに座り込んでボーッとカーテン越しの窓を見つめていた。
「……じゃあ、見送りに行こうかな。」
「まだ寝ててもいいんだぞ。」
「いいの。もう、目覚めちゃったから。」
ニッコリと笑うと、千春はベットから降りて、裸足のままピタピタと秋文に近づき、手を握った。
そして、2人で並んで玄関まで歩いた。
「じゃあ、いってくる。」
「気を付けてね。あ、なんか、これはいってらっしゃいのチューのシチュエーションだね。」
「………おまえ、そんなの恥ずかしくないのかよ。」
「恥ずかしくないよ、はい。」
千春は、ゆっくりと目を閉じて秋文のキスを待っている。そんな可愛い姿の彼女を放っておけるはずもなく、小さくため息をついたあと、唇に短いキスを落とし、「いってきます。」と言う。思った以上に恥ずかしくて自分の顔が赤くなるのがわかり、そのままドアの方を向いてしまう。
「秋文、ありがとう。いってらっしゃい。」
後ろから、千春のやさしい声が聞こえてきた。
誰かに見送られるのもいいな、と思いながら、もう1度振り向き千春の頭を軽く撫でる。
そして、ドアを開けて外に出た時、彼女が小さな声で何か言ったような気がした。
けれどドアは止まることもなく、バタンと閉まった。
気のせいかと思い、秋文は自分の車に向かった。
朝からこうやって千春と過ごせた事で、自然と笑顔になっているのに気づく。
いつかは毎日こうやって見送ってもらえるようになるのだろうか。そんな事を考えると、仕事を頑張ろうと更に思える。
彼女からの力を貰えたようで、今日からの試合は負ける気がしなかった。