強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました



 「おい、大丈夫か?」
 「あ、秋文……おはよう。」
 「昨日はその、悪かった。夢中になりぎた。」
 「ううん。私がそうして欲しかったからいいの。……もう出掛けるの?」
 「今日からまた遠征だ。」


 今日から地方での試合が続く。休日で千春は休みの日だがしばらくは会えない。
 秋文が起きる時はまだ熟睡していた千春。出掛ける前に千春の顔を見ていこうと寝室へ向かうと、すでに千春は起きており、ベットに座り込んでボーッとカーテン越しの窓を見つめていた。


 「……じゃあ、見送りに行こうかな。」
 「まだ寝ててもいいんだぞ。」
 「いいの。もう、目覚めちゃったから。」


 ニッコリと笑うと、千春はベットから降りて、裸足のままピタピタと秋文に近づき、手を握った。

 そして、2人で並んで玄関まで歩いた。


 「じゃあ、いってくる。」
 「気を付けてね。あ、なんか、これはいってらっしゃいのチューのシチュエーションだね。」
 「………おまえ、そんなの恥ずかしくないのかよ。」
 「恥ずかしくないよ、はい。」


 千春は、ゆっくりと目を閉じて秋文のキスを待っている。そんな可愛い姿の彼女を放っておけるはずもなく、小さくため息をついたあと、唇に短いキスを落とし、「いってきます。」と言う。思った以上に恥ずかしくて自分の顔が赤くなるのがわかり、そのままドアの方を向いてしまう。


 「秋文、ありがとう。いってらっしゃい。」


 後ろから、千春のやさしい声が聞こえてきた。
 誰かに見送られるのもいいな、と思いながら、もう1度振り向き千春の頭を軽く撫でる。

 そして、ドアを開けて外に出た時、彼女が小さな声で何か言ったような気がした。
 けれどドアは止まることもなく、バタンと閉まった。
 気のせいかと思い、秋文は自分の車に向かった。



 朝からこうやって千春と過ごせた事で、自然と笑顔になっているのに気づく。
 いつかは毎日こうやって見送ってもらえるようになるのだろうか。そんな事を考えると、仕事を頑張ろうと更に思える。

 彼女からの力を貰えたようで、今日からの試合は負ける気がしなかった。




< 97 / 166 >

この作品をシェア

pagetop