甘くて、苦くて
それなのに、
次の日にまた、
村井君は私の心をぐちゃぐちゃに乱した。
学校帰りの駅までの道を、
村井君が女の子と一緒に歩いていたから。
「あれ?前歩いてんの晴人じゃない?」
一緒に帰っていた、友達の桜が言った。
桜はクラスの中心にいる、明るくて、可愛くて、
でも、少しうるさいから苦手だと思っていた子。
話してみたら優しくてリーダーシップのある子で、
文化祭の装飾係が同じで仲良くなった。
ちなみに、同じクラスでサッカー部の健斗君と
2年生のときから付き合っている。
私は桜のことは好きだけど、
村井君を、
晴人と呼び捨てにして呼ぶところが嫌いだった。
嘘、嫌いじゃなくて、自分にはできなくて、
羨ましかったんだ。
『本当だ、女の子と一緒だよ!
村井君って彼女いたっけ?』
本当は泣きそうだったけど、平然を装って言った。
「隣の子、
サッカー部のマネだから彼女じゃないと思うけど、
良い感じなのかな?健斗に聞いてみよ〜」
桜はそう言って笑ったけど、私は全然笑えなくて、
そうなんだ、
って返して違う話題を振ったんだった。