好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
俺は、ほのかが心配だった。

心を閉ざしたように無表情でうつむく姿は中学の頃よく見ていたが、ここまで絶望したような目をしたほのかは初めて見た。



家に帰ると、まだ母親はパートに出ていてリビングを自由に使うことができた。



初回限定盤には、MVが収録されたDVDと握手券がついている。

ほのかと週刊誌に載った俺が、堂々と握手会に行ける訳がない。



握手会の日程が書かれた白い紙を捨てようとしたが、俺はそれを捨てられなかった。

幼なじみとしてほのかに会うことはできなくても、この紙があればファンとして芸能人のほのかに会うことができる。

俺は、その可能性を完全に捨てることができなかった。



DVDだけ取り出して、握手券はCDのケースに戻した。
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