好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
CDのケースをテーブルに広げたまま、新曲のMVを再生する。

新曲は、アイドルらしい明るい曲だった。

他のメンバーは笑顔で元気に踊るなか、センターのあいつには笑顔がなかった。

無理矢理その場所に立たされている感じだった。



ダンスにキレがなく、目に表情がない。

心をなくした操り人形のように、音楽に合わせて手足を動かしていた。

いつもなら新曲のMVは繰り返し再生するが、今回は一度観ただけで充分だ。



これ以上、辛そうなあいつの顔を観たくなかった。

俺はMVを停止して、取り出したDVDをケースに戻した。
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