好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
式典の間、俺はあいつのことで頭がいっぱいだった。

snow mistを卒業するとは、どういうことだろう。

あいつは、もうアイドルじゃなくなるのか。



どうして俺にそれを告げた。

あいつは、それ以上のことは何も言わなかった。



あの日交わした言葉を、あいつは覚えているのだろうか。

涙のキスを、あいつは忘れていないだろうか。



もう一度、あいつに確認したかった。

式典を終えて、会場の中を探したがあいつの姿はなかった。

あいつの隣に座っていた笹川に聞いたら、「仕事があるから、東京に戻る」と式典の途中でいなくなったらしい。



俺はまた、あいつに何も言ってやれなかった。

あいつに『綺麗になった』とも、『俺の気持ちは変わっていない』とも伝えることができなかった。

今日ほめられたのは、笹川の綺麗な振袖だけだ。



俺は二十歳になっても、あの頃と変わらずヘタレのままだった。
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