好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
「あたし、東京に行くんだ」

「えっ……?」

「新学期から向こうの学校に行く」

新学期って……
夏休みが終わるまであと一週間、もう登校日もない。

隣の席で眠る彼女の姿はもう見られないのか。

まだ現実を受けとめきれない俺に、ほのかははっきりと言葉を続けた。



「あたしね、ずっと学校行きたくないって思ってた。
何かされてやりかえせない自分も、こんな自分嫌だって思うのに変われない自分も……全部嫌いだった」

彼女がそんなふうに思っていたなんて知らなかった。

俺は、そんなほのかがずっと好きだった。

今さら自分の気持ちをぶつけることもできず、俺は黙って彼女の話を聞いていた。
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