好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
「あたし、自分じゃオーディションに応募する勇気もなかった。本当に……ありがとう」

笑顔で話していた彼女の瞳に、うっすらと涙が浮かぶ。

感激の涙なのか、別れの涙なのか俺にはわからない。

彼女につられて、俺まで涙ぐみそうになってしまった。

男が泣くなんて情けない。

涙が落ちないように、俺は空を見上げた。



「向こうに行っても……頑張れよ」

俺は精一杯気丈に振る舞う。

「うん……」

彼女は迷うことなくうなずく。

彼女はもう覚悟が決まっているようだった。
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