好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
ポップコーンとジュースを乗せたトレーを持って映画館に入る。

あいつの好みは、保育園の頃から変わらない。



今日もあいつは、オレンジジュースを選んでいた。

今でも炭酸が苦手なほのかを可愛らしく思いながら、俺はあいつにオレンジジュースを手渡した。

自分が選んだ炭酸飲料は、座席のドリンクホルダーに乗せ、ほのかとの間にポップコーンを置いた。



ほのかは、俺の隣に座っている。

あいつはいつの間にこんなにアイドルらしくなったのだろう。

服装もしぐさもちょっとした表情も、あいつは無意識にやっているのかもしれないが、男心をくすぐってしまう。



こんなに可愛らしい生き物が隣にいて、落ち着けるはずがない。

俺は手に変な汗をかきながら、あいつの隣に座っていた。
< 62 / 210 >

この作品をシェア

pagetop