好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
予想していたよりマジなキスを見せつけられたショックから立ち直れないうちに、映画は終わってしまった。

snow mistが歌うエンディングテーマが流れる。

エンドロールが終わっても、俺はまだほのかの手を離さなかった。



本当は、手を握っているだけでは気が済まない。

ほのかのファーストキスは、俺がもらうはずだった。



会場の明かりがつけられ、気がつくと他の客は既に席を立っていた。

身動き一つしないほのかに視線を向けると、彼女は恥ずかしそうにうつむいていた。



「蒼に渡したいものがあるの……」

ほのかはそう言って、床に置いた鞄を拾い上げた。
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