ドラマチックな恋は、突然に。
「……こないだ、久しぶりに会いましたよね」

「…あ、ああ……あの時…」

旦那と出かけた時だと思う。

「ごめんね…何にも言わないで通り過ぎちゃって……」

そう謝ると、

「ああ、いいえ、そんなのは気にしないでください」

と、彼は首を振った。

「違うんです。あの時、初めて志穂さんが旦那さんと一緒のところを見て、いいなって思って」

「……いいなって?」

不思議に思い聞き返すと、

「…はい、仲良くて羨ましいなって感じて。だから、これでよかったんだって思えて」

彼はそう答えて、

「ずっと、あんな別れ方をしてよかったのかなって思ってたんです。でもあそこで志穂さんを見かけた時に、あれ以上の関係に進まなくてやっぱりよかったんだなって。
もしあんな優しそうな旦那さんのことを裏切ったりしてたら、志穂さんを好きになれなかったかもしれないから」

「ああ……」ため息ともつかない声が漏れた。

「……僕は、志穂さんのことを好きだったけれど、でもそれは憧れに近いようなものだったから。だから夫婦の関係を見た時に、ああ僕は立ち入らなくてよかったんだって。壊したりすることがなくてよかったって」

「……うん、ごめんね…」

彼から伝えられるまっすぐな思いに、そう言わずにいられなくなる。

「いえ、本当に謝らないでください。これで、ちゃんと吹っ切れると思ったんで」

彼が差し出した手を、私からもおずおずと握ると、

「ありがとうございます。僕もいつかきっと理想の人を見つけて、志穂さんたちのような夫婦になるので」

ギュッと強く握り返して、

「だから本当に、ありがとうございました」

笑顔を見せた。

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