打って、守って、恋して。

七巡目まで指名を受けた選手たちが出揃って全員ユニフォームを着せられて席についた時点で、今度は球団マスコットがコミカルな動きで登場。
新人選手たちの席をぐるりと回って面白おかしい演出で緊張をほぐそうとしているようだ。

ほかの六人は表情が緩んだというのに、旭くんはそれでもまだ緊張した状態を維持している。
ここまでくると逆にすごい。

そしていち早く旭くんだけが笑っていないことに気づいたマスコットが彼の背後に近づき、後ろから頭を撫でたり肩をすりすりし始めた。
これには周りの人たちの笑いを誘った。


『こらこら、緊張してるんだから邪魔しないであげてくださいね〜。おふざけは禁止〜』

と、進行役の男性もにこやかにマスコットに注意なんかをしている。
ほんの少しだけ旭くんが頑張って引きつった笑顔を見せた。


『さて、ここからは新人選手のみなさんに簡単な質問をしていきますのでお答えください。毎年みなさん個性が出ますよ』

楽しそうに進行役が手元にある資料を見ながら順番に質問をしていく。
座って並んでいる順番が一巡目からなので、必ず旭くんには二番目に回ってくることになる。

この質問タイムは、本当に旭くんの個性が出た。

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