Break

「…ありがとうございます」


かしこまりました、と柔らかな笑顔とともにシェイカーを取りに行こうと振り返る。


「あの…!でもウィスキーサワーじゃなくて」


バーテンダーが驚いている。無理もない。

3年も通っていて、わたしがカクテルの注文をしたのは、最初に来た2、3回だけ。

そのときからずっと、ウィスキーサワー。


「あの…すみません」


本当はずっと、彼と一緒にいるときに飲みたくて、でも、決して頼めなかったカクテル。

視界がぼやけ、声が震えそうになるのを必死に堪える。


「アプリコットフィズ、ください」
















< 7 / 8 >

この作品をシェア

pagetop