Break
「…ありがとうございます」
かしこまりました、と柔らかな笑顔とともにシェイカーを取りに行こうと振り返る。
「あの…!でもウィスキーサワーじゃなくて」
バーテンダーが驚いている。無理もない。
3年も通っていて、わたしがカクテルの注文をしたのは、最初に来た2、3回だけ。
そのときからずっと、ウィスキーサワー。
「あの…すみません」
本当はずっと、彼と一緒にいるときに飲みたくて、でも、決して頼めなかったカクテル。
視界がぼやけ、声が震えそうになるのを必死に堪える。
「アプリコットフィズ、ください」