Break
こんなことはもう慣れている。
今更、寂しさもない。
…なんて。
「すみません」
苦笑いでバーテンダーに謝る。
せっかく作ってもらったけれど、彼の置いていったものはわたしには飲めない。
ここで働いていて、こんな光景は慣れっこなのだろうか。
嫌な顔ひとつせず、飲む人のいなくなったカクテルを笑顔でグラスに移し替える。
「私がいただいてもよろしいですか?」
「すみません。ありがとうございます」
心苦しく思いながらも、カクテルが無駄にならなかったことに、少し安堵する。
「お姉さんも、ご一緒に、いかがですか?」
こうして置いていかれたわたしが、友達を呼ぶこともなく一人で飲んでいくことを、いつも見ていて知ってるのだろう。