死にたい君に夏の春を
「……そんなもん持ってどうするんだ」
僕の手には、九条が隠していた黒い拳銃。
ずっしりと重く、ナイフで切られた右手で持つにはとてもじゃないが厳しい。
プルプルと震えるのは、痛みからか恐怖からなのか僕には判断できやしない。
「なんだよ、引けよ」
男はそう言う。
そうだ引け、引くんだ。
この指を動かすだけで、彼女は助かる。
たったそれだけのことなのに、体が一向に動こうとしない。
こんな時なのに、命がかかっているのに。
人を撃つのが、怖い。
九条と初めて話したあの夜、彼女は何の躊躇もなかった。
そんな恐れ知らずの彼女みたいになりたいって思ったはずなのに。
けれど、なれないんだ。
彼女にあって僕にはないもの、それは勇気だ。
指を引くことだけの勇気が、僕には足りない。
僕は彼女を救えないのか。
「ガキが。調子に乗ってんじゃねぇよ」
僕の拳銃は瞬く間に奪い取られ、そして頭に向かって振り下ろされる。
その振動で脳が激しく揺れ、力なく床に倒れた。
男は拳銃の弾倉を見て。
「ちっ、中身入ってねぇじゃねぇか」
そう言って僕の目の前に拳銃が投げ捨てられる。
薄れゆく意識の中、九条が担がれていくのを見た。
首から、僕のあげたチョーカーが見える。
必死に手を伸ばそうとするが、届かない。
こんな弱い僕のせいで、彼女は。
そこで完全に、僕の意識は途切れた。
僕の手には、九条が隠していた黒い拳銃。
ずっしりと重く、ナイフで切られた右手で持つにはとてもじゃないが厳しい。
プルプルと震えるのは、痛みからか恐怖からなのか僕には判断できやしない。
「なんだよ、引けよ」
男はそう言う。
そうだ引け、引くんだ。
この指を動かすだけで、彼女は助かる。
たったそれだけのことなのに、体が一向に動こうとしない。
こんな時なのに、命がかかっているのに。
人を撃つのが、怖い。
九条と初めて話したあの夜、彼女は何の躊躇もなかった。
そんな恐れ知らずの彼女みたいになりたいって思ったはずなのに。
けれど、なれないんだ。
彼女にあって僕にはないもの、それは勇気だ。
指を引くことだけの勇気が、僕には足りない。
僕は彼女を救えないのか。
「ガキが。調子に乗ってんじゃねぇよ」
僕の拳銃は瞬く間に奪い取られ、そして頭に向かって振り下ろされる。
その振動で脳が激しく揺れ、力なく床に倒れた。
男は拳銃の弾倉を見て。
「ちっ、中身入ってねぇじゃねぇか」
そう言って僕の目の前に拳銃が投げ捨てられる。
薄れゆく意識の中、九条が担がれていくのを見た。
首から、僕のあげたチョーカーが見える。
必死に手を伸ばそうとするが、届かない。
こんな弱い僕のせいで、彼女は。
そこで完全に、僕の意識は途切れた。