大江戸シンデレラ

いつもは臈(ろう)たげな舞ひつるの顔(かんばせ)が、今は般若の面のごとく険しい。
しかも、カッと頭に血が上っているためか、頬が赤鬼のように燃えている。

兵馬が初めて見る、舞ひつるの怒った顔だった。

「と、とにかくよ、
……また此処(ここ)でおめぇさんに逢えてよかったよ」

自(おの)ずと、兵馬はまるで舞ひつるを宥(なだ)めて機嫌を取るかのような穏やかな声になった。

「だからよ……おれにそないな顔を見せるのは勘弁してくんな」


——まぁ、どのお口がさようなことをお云いでなんしかえ。若さまはきっと、玉ノ緒にもこないな調子で云うとりんす。

……わっちは騙されのうなんし。

されども、兵馬がなにを云うたとて、舞ひつるの顔色は変わりそうになかった。


とうとう、兵馬の顔がやるせなさそうに歪んだ。

「なぁ……おれは、おめぇの怖(こえ)ぇ顔を吉原(ここ)での見納めにゃ、したくねぇのよ」


舞ひつるの眉根が訝(いぶか)しげに寄せられた。

——今、若さまは『見納め』と云いなんしたか。

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