大江戸シンデレラ

「上條さま、あ…ありがとうございまする」

美鶴が深々と(こうべ)を垂れた。
本日何度目になるのかわからぬほどだが、うれしさゆえなのは此度(こたび)だけであった。

すると……

「……くっ」

という声が聞こえたため、思わず顔を上げると、

「そなたから、初めて『申し訳ありませぬ』以外の言葉が聞けたな」

広次郎が口許を握り(こぶし)で隠しつつ、笑みを漏らしていた。
切れ長の目の端が、こころなしか、下がって見える。

「もっ、申し訳あ……」

「その言葉は聞き飽きたでござる」

美鶴の(げん)は、すかさず制された。

「それから、(それがし)のことは家名ではなく、通り名の方で呼んでもらえぬか。
まもなく、家名が『島村』になるのでな」


——ということは……

「広次郎」さま、でなんしかえ。

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