大江戸シンデレラ

勘解由の話を聞いていた美鶴は、ふと思い出した。

——確か……吉原の面番所に詰める役人も「隠密廻り同心」でありんしたかえ。

大門のすぐ(そば)にある番所(交番)ゆえ、大見世にいたとは云え一介の振袖新造にすぎぬ「舞ひつる」が、関わりを持つような(ところ)ではなかったが……


「さようでござりまするか。
……島村さま、此度(こたび)は御無事のお帰り、何よりのことにて存じまする」

美鶴は改めて深々と平伏した。


「面を上げよ。本日、おまえを呼び出したのは、当家や(それがし)のことを申すためだけではない。
おまえの今後についての話もせねばならぬ」

むしろ、勘解由にとっては此処(ここ)からが今宵の本懐だ。その切れ長の目が、ますます鋭くなる。

美鶴は、すっ、と顔を上げた。

此度(こたび)、おまえに下されたことを申し渡す」

勘解由の鋭い眼差しを、美鶴は真正面から見返した。

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