大江戸シンデレラ
だが、さような事情であらば、祝言の時期を遅らせれば良いだけの話であるが——
「……我らにとっても、またとない『好機』にてござる。客を招ぶことなく身内の者のみで祝言を行えるゆえ、この機に乗じて日取りを決めることとした」
美鶴のなんとも腑に落ちぬ顔を看破したのか、勘解由は口の端を微かに上げて云った。
見ようによれば仄かに笑みしているかのように見えなくもないが、そのあとの言があまりにも物騒であった。
「おまえが我が島村家に嫁すにあたり、すでに幾重にも養女の縁組をしてござる」
初めは足軽程度の家と養子縁組をし、徐々に家格を上げて養子縁組を繰り返していき、やがて最後に「同格」の御家との養子縁組にまで持っていく。
武家ではない者を妻や子女にする際に用いられる「裏の手」で、「遠縁の子と縁組した」と云うのがその口上だ。
「今となっては……よもや『生家』に辿り着ける者はいるまい」