大江戸シンデレラ
「……あれは夏になる頃、確か大川の川開きの前くらいだったか」
多聞は思い出しているのか、遠くを見つめるような目になった。
「兵馬の野郎はよ、何処でそないな口上を覚えてきやがったのかは知らねぇが……」
多聞の眉根が、ぐーっと寄る。
途端に、苦虫を噛み潰したかのごとき忌々しげな顔になった。
「『父上……松波 兵馬、一世一代の頼みがあってござる。ある者を身請けして、我が妻にしとうござる』
と、いきなり云ってきやがった」