大江戸シンデレラ

「ちっ、慣れねぇ『話』なんてするもんじゃねえな。
弥吉の奴が、お互い悔いの残らねぇように、おめぇとよっく話せ、っ()うからさ。
だけどよ、話した(ところ)で一向に埒が明かねえじゃねぇかよ」

「だ、旦那さま……お放しくだされ……」

美鶴は離れようと必死でもがくが、抱きしめる兵馬の力がますます強くなるばかりだ。


「うちの親父が、おめぇになん()ったかは知らねぇけどよ。
おれの『想い人』っつうのは玉ノ緒じゃねえぜ」

「……されど、舅上(ちちうえ)様が南町奉行所の息のかかった岡っ引きや下っ引きに調べさせたら、しょっちゅう人目を忍んでは吉原の(はじ)にある御堂で逢引してござったと……」

兵馬の腕の中で、美鶴は云い返す。

「はっ、親父も焼きが回ったもんだな。
まぁ、どういうわけか吉原に寄りつきたがらねぇから無理もねえか。
吉原の内向きのことを知りたけりゃ、南町奉行所の小者じゃ駄目だ。
吉原の面番所の岡っ引きや下っ引きを使わねぇとな。
……そいつらなら、同じ振袖新造(ふりしん)でも見間違いなんかしやしねぇぞ」


——『同じ振袖新造』……『見間違い』……

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