大江戸シンデレラ
元より、見世の云うことを拒める身分ではないのだ。
確かに、親に売られた身ではない舞ひつるは、玉ノ緒が背負うほどの負い目はあるまい。
だが、生まれてからこの日まで掛かった養い金は久喜萬字屋が出しているため、いずれ我が身ひとつで返さねばならぬ定めにあった。
特に見世から見込まれていた舞ひつるは、幼き頃より歌舞音曲・和漢籍などのその道で名の通ったお師匠たちに教えを請うている。
その束脩だけでもかなりの額になるであろう。
その一切合切を、身請け先がぽんと出すのだ。
舞ひつるの口元には、知らず識らずのうちに観念したかのごとき薄い笑みが漂っていた。
それは、これより先は決して引き返せぬ道を、ようやく自らの意思で一歩踏み出した刹那でもあった。
「おめえ……かような刻に此処へ来てたのかよ」