大江戸シンデレラ

明石稲荷の小堂の前に立った舞ひつるは、弾む息を整えたあと、いつものように手を合わせた。

そして、これもまたいつものように、

『今日もお天道様を拝めて、ありがたいことでありんす。
唄も舞も精進して、わっちもいつか死んだ祖母(ばば)さまやおっ()さんのように、吉原で一番(いっち)綺麗で芸のある「呼出」になりなんし……』

と云おうとしたが——


「……わっちはもう、呼出にはなれぬなんし」

思わず、つぶやいていた。


おのれ自身で発したその言葉が、まるでからからに乾いた地面に雨水が染み込むように、身の内じゅうに広がっていく。

小堂の木扉に遮られ、奥に祀られている御姿は見えないが、(はか)らずも兵馬と中に入ったときに見てしまった御神体に、舞ひつるは思いを馳せる。


——神様のお導き、なんしかえ。

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