停留所で一休み
私は何も言えなかった。

言えるはずもなかった。

「それでもまだ、一生懸命になってバカみたいって思うのか?」

否定も肯定もできない。

「だとしたら小形。」

私の体は、一歩後ろへ下がった。

「おまえ、何の魅力もない、最低な人間だな。」

彼はそう言うと前を向き、私を置いて、ドンドン先を歩いて行った。


「最低な人間……」

胸が痛かった。

「一生懸命になるくらい努力してないって?」

いつの間にか、瞳には涙が貯まっていた。

「努力したよぉ。でも、努力したって手に入らないじゃん。夢も希望も、恋愛も……結婚だって手に入らなかったもん。」


夢を持って東京に来た。

輝かしい未来が、そこにあると思っていた。
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