停留所で一休み
仕事もバリバリやって、”生きてる”って感じがして、人並みに恋愛もして、ささやかな幸せも、手に入ると思っていた。

でも実際は、何も手にしてない。

残ったものさえ、何もなかった。


私は目の前の堤防の上に座って、なんとなく、海を眺めた。

それこそ、日が傾いたのも忘れて、辺りが暗くなったのにも気がつかずに。


そこへ白い車が通りかかった。

ブレーキの音がして、車のドアが開く。


「出海?そこで何やってんの?」

昔から弥生は、こういう時にタイミングよく現れる。

そのまま何も返事をしないでいると、弥生はドアを閉めて、堤防を昇って来て、私の隣に座った。

「出海、何があったのか分かんないけど、元気出しなって。」
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