停留所で一休み
「小形、水水!」

「あっ!」

あいつは蛇口に向かうと、急いで水を止めた。

急に止めたからか、ホースは勢いよく私の手から離れた。

「きゃっ!」

その瞬間、離れていたはずのあいつが、私の身体を後ろへ引き寄せた。


「危ない……」

あいつの腕が、しっかりと私の身体を支えている。

「もう少しで、びしょ濡れになるところだったな。」

あいつ声も、耳元から伝わってくる。

「ありがとう…」

ドキドキして、それを言うだけで精いっぱいだった。

「いや……」

あいつが少し腕を緩めると、私とあいつは、突然目が合った。

あいつの腕は、まだ私から離れていない。

私の体勢は、少し横を向いていて、傍から見ると紛れもなく恋人同士に見える。
< 199 / 224 >

この作品をシェア

pagetop